『評決のとき』 「目を閉じて想像してほしい」。映画史に刻まれた、魂を揺さぶる最終弁論

映画レビュー

評決のとき

★★★★★★★★★★4.3
  • 監督:ジョエル・シュマッカー
  • 公開年:1996年
  • 製作国:アメリカ
  • 上映時間:149分

ミシシッピー州の街カントンで10歳の黒人少女が二人の白人青年に暴行を受けるという事件が起った。娘の哀れな姿に心を傷めたその父カール・リーは、マシンガンを持って裁判所に出向き、その青年2人を射殺してしまう。新米弁護士として働くジェイクは有能な法学生エレンの助けを借りてカール・リーの弁護を務める事になるが……。

見どころ

本作を語る上で欠かせないのが、今見ると信じられないほど豪華な名優たちの共演だ。

娘を想うあまり凶行に走ってしまった父親カール・リーを演じるのは、名優サミュエル・L・ジャクソン。「彼がやったことは法的には殺人だが、親としてその怒りは痛いほど分かる」。観客にそう思わせてしまう彼の深く悲しい瞳と、法廷で吠える姿は圧巻の一言だ。

そして、彼を無罪にするために立ち上がる若き白人弁護士ジェイクを演じるのが、当時まだ無名に近かったマシュー・マコノヒー。南部の焼け付くような暑さの中で汗を流し、家族をKKK(白人至上主義団体)に脅かされながらも、次第に「真の正義」に目覚めていく泥臭い姿を見事に演じ切り、本作で一気にスターダムへと駆け上がった。 さらに、彼らを冷徹に追い詰めるエリート検事役にケヴィン・スペイシー、ジェイクを助ける熱血法学生にサンドラ・ブロックと、画面のどこを見ても主役級の役者が火花を散らしている贅沢さは、90年代映画ならではの醍醐味だ。

観客の「無意識の偏見」を暴く、見事な脚本

物語の舞台となるアメリカ南部ミシシッピ州は、根強い人種差別が残る町。裁判の陪審員はすべて白人で固められ、黒人の父親が「無罪」を勝ち取ることは100%不可能と思われていた。

本作が素晴らしいのは、ジェイクら弁護側が単に「法律の抜け穴」を探すのではなく、陪審員たち(そして私たち観客)の心の中にある「無意識の偏見」に真っ向から挑んでいく点だ。 「もし逆の立場だったら?」「もしこれが自分の娘だったら?」。理屈や法律論ではなく、人間の「感情」と「共感」という最も原始的な部分に訴えかけていくプロセスは、観ていて鳥肌が立つほどスリリングで熱い。

映画史に残る、伝説の「最終弁論」

そして迎えるクライマックス。映画ファンの中で今も語り継がれる、マシュー・マコノヒーによる「最終弁論」のシーンだ。

彼は陪審員たちに向かって、「目を閉じてください」と語りかける。そして、幼い少女が受けたあまりにも残酷で痛ましい事件の全貌を、静かに、しかし感情を込めて詳細に語って聞かせる。陪審員たちの目から涙が溢れたその瞬間、彼が最後に放った「ある一言」が、法廷の空気を、そして映画を観ている私たちの価値観を根底からひっくり返す。

あの数分間のスピーチは、映画の歴史においても屈指の名シーンだ。あの言葉を聞くためだけに、この映画を観る価値があると言っても過言ではない。

結び

『評決のとき』は、人種差別や理不尽な暴力という重苦しいテーマを、一級品の法廷サスペンスとしてエンターテインメントに昇華させた奇跡のような作品だ。

正義とは、法律を守ることか、それとも愛する者を守ることか。 もしあなたがまだこの映画を観ていないなら、ぜひジェイクの「最終弁論」を、自分の目を閉じて聞いてみてほしい。きっと、映画が終わった後も深く考えさせられ、誰かと語り合いたくなるはずだ。

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